1. 会社設立後の年間スケジュール概要
マイクロ法人を設立した後は、年間を通じて様々な経理・税務・社会保険・届出に関する手続きが必要となります。この記事では、設立後の重要なタスクを月別・年次別に整理し、見落としがちな申請タイミングやFAQも含めて詳しく解説します。
2. 月次タスク一覧
【毎月実施すべき業務】
経理関連
- 会計帳簿の記帳:取引内容を会計ソフトに入力
- 領収書・請求書の整理:証憑書類をファイリング
- 銀行口座・クレジットカードの明細確認:記帳漏れがないかチェック
- 売掛金・買掛金の管理:未回収・未払いの確認
給与関連(役員報酬がある場合)
- 給与の支払い:役員報酬の振込処理
- 源泉徴収税の計算:所得税の源泉徴収額を計算
3. 年次タスク一覧
【決算月】
- 決算作業:期末の在庫確認、減価償却計算、引当金計上など
- 決算書の作成:貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書など
- 税務申告準備:法人税申告書、消費税申告書(課税事業者の場合)、地方税申告書の準備
【決算月の2ヶ月後まで】
- 法人税申告・納付:決算日から2ヶ月以内に税務署へ申告・納付
- 消費税申告・納付:課税事業者の場合、決算日から2ヶ月以内
- 地方税申告・納付:都道府県・市町村へ申告・納付
【1月】
- 給与支払報告書の提出:1月31日までに市区町村へ提出
- 法定調書合計表の提出:1月31日までに税務署へ提出
- 源泉徴収票の交付:役員・従業員へ交付(1月31日まで)
【7月】
- 労働保険の年度更新:7月10日までに労働基準監督署へ申告・納付
- 算定基礎届の提出:7月10日までに年金事務所へ提出(社会保険加入の場合)
【11月】
【12月】
4. 重要な申請・届出タイミング
【設立直後】
- 法人設立届出書:設立から2ヶ月以内(税務署・都道府県・市区町村)
- 青色申告の承認申請書:設立から3ヶ月以内、または最初の事業年度終了日のいずれか早い日まで
- 給与支払事務所等の開設届出書:給与支払開始から1ヶ月以内
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書:年2回の納付を希望する場合
【社会保険関連】
- 健康保険・厚生年金保険新規適用届:事実発生から5日以内
- 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届:事実発生から5日以内
- 労働保険関係成立届:従業員を雇用した日の翌日から10日以内
【その他重要なタイミング】
- 役員報酬変更:事業年度開始から3ヶ月以内に株主総会で決議
- 消費税課税事業者選択届出書:適用を受けようとする課税期間の開始日の前日まで
- 棚卸資産の評価方法の届出書:最初の確定申告書の提出期限まで
5. よくある質問(FAQ)
Q1. 決算月はいつに設定すべきですか?
A. 事業の繁忙期を避けるのが一般的です。また、設立時期から考えて最初の事業年度を長めに取れる月を選ぶと、初年度の準備期間に余裕が持てます。
Q2. 青色申告と白色申告の違いは?
A. 青色申告は帳簿作成義務がありますが、最大65万円(電子申告の場合)の特別控除や欠損金の繰越控除など税制上のメリットが大きいため、多くの法人が青色申告を選択しています。
Q3. 役員報酬はいつでも変更できますか?
A. 基本的に事業年度開始から3ヶ月以内の定時株主総会でのみ変更可能です(定期同額給与)。それ以外のタイミングでの変更は損金不算入となる可能性があります。
Q4. 源泉所得税の納期の特例とは?
A. 給与の支給人員が常時10人未満の場合、源泉徴収した所得税を年2回(1月と7月)にまとめて納付できる制度です。毎月納付する手間が省けます。
Q5. 社会保険の加入義務はありますか?
A. 法人の場合、役員1名のみでも社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が原則として義務付けられています。ただし、役員報酬がない場合や非常に少額の場合は加入しないケースもあります。
Q6. 消費税はいつから納税義務が発生しますか?
A. 原則として、資本金1,000万円未満で設立した法人は、設立1期目と2期目は免税事業者となります。3期目以降は、2期前(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超えた場合に課税事業者となります。
6. 重要な注意事項
【期限を守る】
税務申告や社会保険の届出には厳格な期限が設定されています。期限を過ぎると加算税や延滞税が課される場合があるため、カレンダーやリマインダーを活用して必ず期限内に手続きを完了させましょう。
【記帳は日常的に】
決算期に慌てて1年分の記帳をすると、ミスや漏れが発生しやすくなります。月次または週次で定期的に記帳する習慣をつけることが重要です。
【専門家の活用】
税理士や社会保険労務士といった専門家に依頼することで、手続きのミスを防ぎ、節税対策や最新の法改正情報も得られます。特に設立初年度は専門家のサポートを受けることをおすすめします。
【書類の保管】
帳簿書類や証憑書類は、原則として7年間(一部10年間)の保存義務があります。紙・電子データともに適切に管理し、税務調査に備えましょう。
【法改正への対応】
税制や社会保険制度は頻繁に改正されます。国税庁や厚生労働省のウェブサイト、専門家のメルマガなどで最新情報をキャッチアップしましょう。
【資金繰りの計画】
法人税や消費税、社会保険料は高額になることもあります。納税資金を計画的に確保するため、月次で納税予測を行い、専用口座に積み立てるなどの対策が有効です。
7. まとめ
マイクロ法人を設立した後は、経理・税務・社会保険・各種届出など、年間を通じて多くのタスクが発生します。この記事で紹介した年間スケジュールとタスク一覧を参考に、必要な手続きを漏れなく・期限内に完了させることが、健全な法人運営の基本です。
特に設立初年度は不慣れなことも多いため、専門家のサポートを受けながら、自社に合ったスケジュール管理の仕組みを早めに確立しましょう。適切な準備と計画により、マイクロ法人の運営を円滑に進めることができます。
