マイクロ法人向けクラウド会計ソフト徹底比較(freee・Money Forward・弥生)

「マイクロ法人を作ったはいいけれど、経理はどうすればいい?」
「個人事業主の確定申告すら面倒なのに、法人の決算なんて自分にできるの?」

会社を作ると避けて通れないのが「会計・決算」です。
特にマイクロ法人のオーナーは、本業(個人事業)で忙しいため、法人の事務作業には極力時間をかけたくないのが本音でしょう。

そこで必須アイテムとなるのが**「クラウド会計ソフト」**です。
しかし、いざ選ぼうとすると「freee(フリー)」「マネーフォワード(Money Forward)」「弥生会計」など、どれも似たようで違いが分からず迷ってしまいます。

結論から言うと、マイクロ法人における会計ソフト選びで最も重要なのは、機能の多さではなく**「個人事業主側で何を使っているか(二刀流の管理のしやすさ)」と「決算を税理士に頼むか、自分でやるか」**の2点です。

この記事では、主要3社のソフトを徹底比較し、あなたの運用スタイルに最適な一本を導き出します。

1. マイクロ法人に会計ソフトが必須な理由

そもそも、なぜ月額費用を払ってまで会計ソフトを導入する必要があるのでしょうか。「取引が少ないならExcelでいいのでは?」と思う方もいるかもしれません。

「複式簿記」の壁と法人税申告

個人事業主の白色申告なら「お小遣い帳」レベルの単式簿記でも通りますが、法人の会計は必ず**「複式簿記」**で記帳し、厳格な決算書(負債対照表・損益計算書)を作成する必要があります。
これをExcelでゼロから作るのは、簿記1級レベルの知識があっても至難の業です。

銀行口座との自動連携が「二刀流」を救う

マイクロ法人×個人事業主の二刀流において、最大のリスクは**「個人と法人の資金混同」**です。
「どっちのカードで払ったっけ?」という混乱を防ぐためにも、銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込み、AIが仕訳を提案してくれるクラウド会計ソフトの機能は、時間短縮だけでなくミスの防止に不可欠です。

コスト対効果が圧倒的に高い

クラウド会計ソフトの利用料は、法人プランでも月額2,000円~3,000円程度です。
これで経理担当者を雇う必要がなくなり、複雑な減価償却や決算書の作成まで自動化できるなら、コストパフォーマンスは圧倒的です。[[マイクロ法人の作り方完全解説]]でも触れましたが、設立直後から契約しておくべき必須ツールと言えます。

2. 主要3社のクラウド会計ソフト機能比較

それでは、代表的な3つのクラウド会計ソフトを比較してみましょう。

特徴 freee会計 マネーフォワードクラウド 弥生会計オンライン
シェア No.1(急成長中) 定番・堅実 老舗の安心感
設計思想 経理初心者向け(ERP型) 簿記経験者・プロ向け(会計帳簿型) コスト重視・小規模向け(シンプル型)
自動連携 ◎ 非常に強い ◎ 非常に強い 〇 標準的
法人税申告 ◎ 自力申告機能あり △ 基本は税理士連携 △ 基本は税理士連携
スマホアプリ ◎ 使いやすい 〇 閲覧メイン △ 最低限
最低料金(年) 約3万円~ 約3.5万円~ 初年度無料などあり

それぞれのソフトには明確な「性格」があります。

① freee会計(フリー)

**「簿記を知らない人でも直感的に使える」**がコンセプト。
従来の「借方・貸方」という概念をあまり意識させず、「いつ・どこで・何に使った」を選ぶだけで裏側で複式簿記を作ってくれます。
また、**「法人税申告機能(freee申告)」**が内包されており、小規模なマイクロ法人なら**税理士なしで自力決算できる可能性が最も高い**ソフトです。

② マネーフォワードクラウド(Money Forward)

**「簿記の知識がある人、税理士との連携を重視する人」**向け。
画面構成が従来の帳簿に近く、簿記の知識が少しでもある人には非常に使いやすいです。銀行やAmazon等の連携対応数が圧倒的に多く、データの取り込み漏れが少ないのが強みです。給与計算や請求書などの周辺機能ともセットで使える(ビジネスプラン)のも魅力です。

③ 弥生会計オンライン

**「とにかく安く済ませたい、機能はシンプルでいい」**人向け。
デスクトップ時代からの老舗だけあり、安定感があります。「起業家応援キャンペーン」などで初年度無料になることが多く、初期コストを抑えたいマイクロ法人に人気です。ただし、Macでの動作や他社アプリとの連携など、拡張性はやや劣ります。

3. 「使いやすさ」freee vs 「柔軟性」Money Forward

ここからは、シェアを二分する「freee」と「マネーフォワード(以下MF)」の最大の違いである**「使い勝手(UI/UX)」**について深掘りします。

freee:独自ルールへの慣れが必要だが、ハマれば最速

freeeは「取引」という独自の概念で管理します。
例えば、通常の会計ソフトなら「借方:通信費 / 貸方:未払金」と入力するところを、freeeでは「支出:携帯代」「決済:未決済」のように登録し、後で「消込(けしこみ)」という作業を行います。

・ **メリット**:入出金管理と帳簿作成が同時に終わるため、効率が良い。
・ **デメリット**:簿記の常識と異なる動きをするため、簿記経験者や税理士からは「修正しづらい」と敬遠されることがある。

Money Forward:伝統的な「仕訳」スタイルで汎用性が高い

MFは「振替伝票」や「仕訳帳」など、簿記の教科書通りの入力ができます。もちろん自動入力機能もありますが、最終的には「借方・貸方」の形で確認・修正ができます。

・ **メリット**:「補助科目」などの細かい設定が柔軟にできる。税理士が好む形式。
・ **デメリット**:ある程度の簿記知識がないと、「負借が合わない」などのエラーで躓く可能性がある。

マイクロ法人の「二刀流」における選び方

ここで重要なのが、**「個人事業の方で何を使っているか」**です。

・ 個人が **freee** なら ➡ 法人も **freee** にすべき。
・ 個人が **MF** なら ➡ 法人も **MF** にすべき。

操作体系(UI)が異なるソフトを2つ併用するのは、脳の切り替えコストがかかり、ミスのもとです。
「アカウントの切り替え」機能を使えば、1つのログインIDで個人・法人の帳簿を行き来できるため、**メーカーは統一するのが鉄則**です。

4. 税理士連携・銀行連携の実情

自分一人で管理するのではなく、外部(銀行や税理士)との関わりについて見ていきます。

銀行連携(API連携)

マイクロ法人では、[[銀行口座開設ガイド]]で紹介したネット銀行(GMOあおぞら、SBI、楽天など)を使うことが多いでしょう。
3社とも主要なネット銀行とはAPI連携しており、明細の自動取得は問題なく行えます。

ただし、**楽天銀行**など一部の銀行では、連携の認証期間が短く、頻繁に再認証(ログインパスワード入力など)を求められることがあります。この「連携の安定性」においては、家計簿アプリの知見がある**マネーフォワードが一歩リード**している印象です。

税理士との連携

もし将来的に税理士と顧問契約を結ぶ予定があるなら、**「税理士が対応しているソフト」**を選ぶ必要があります。

・ **税理士業界の現状**:
・ 弥生会計:ほとんどの税理士が対応可能。
・ マネーフォワード:多くの若手~中堅税理士が対応可能。
・ freee:**「freee認定アドバイザー」などの専門税理士でないと断られる**ことがある。

freeeは仕組みが独特なため、freeeに対応していない税理士に依頼すると「Excelに書き出して渡してください」と言われたり、顧問料が割高になったりするリスクがあります。税理士を探す予定がある方は要注意です。

5. コストと継続率から見るおすすめプラン

マイクロ法人のランニングコストとして、各社の料金プランを比較します(2025年時点の目安)。

freee会計(法人)

・ **ミニマムプラン**:年額23,760円(月額換算1,980円)~
・ **おすすめポイント**:この最安プランでも、決算書の作成まで可能です。さらに、法人の義務である**「電子公告」**の枠が無料でついてくる(通常、官報に載せると数万円かかる)のが地味ながら最強のメリットです。

マネーフォワードクラウド(法人)

・ **スモールビジネス**:年額35,760円(月額2,980円)~
・ **おすすめポイント**:会計だけでなく、請求書、給与、経費精算などの機能が「パック」になっています。役員報酬の給与明細を出したり、社会保険の計算をしたりする機能もコミコミなので、トータルで見ると割安です。

弥生会計オンライン(法人)

・ **ベーシックプラン**:年額30,000円~(※初年度0円キャンペーン頻出)
・ **おすすめポイント**:キャンペーン適用なら初年度は最強のコスパです。ただし、2年目以降は他社と変わらない価格帯になります。機能は最小限ですが、マイクロ法人には十分です。

6. まとめ:二刀流なら「個人事業主版」との併用も検討を

マイクロ法人向け会計ソフトの比較を行ってきました。
最後に、タイプ別のおすすめ結論を提示します。

タイプA:簿記知識ゼロ&税理士なしで「自力決算」したい人

👉 **「freee会計」一择**です。
質問に答えていくだけで決算書ができあがる「ステップ型決算」機能は、初心者の強力な味方です。電子公告無料のメリットも大きいです。

タイプB:簿記の基礎知識がある or 税理士に頼む可能性がある人

👉 **「マネーフォワードクラウド」**がおすすめです。
帳簿としての信頼性が高く、税理士との共通言語で話せます。また、個人事業主版でMFを使っているなら、操作感が同じなのでストレスなく二刀流管理ができます。

タイプC:とにかく初年度のコストを抑えたい人

👉 **「弥生会計オンライン」**の初年度無料キャンペーンを狙いましょう。
まずは1年間無料で試してみて、使い勝手が悪ければ2年目から他社に乗り換える(データ移行する)というのも賂い戦略です。

会計ソフトは、マイクロ法人運営の「コックピット」のようなものです。
[[二刀流のためのクラウド会計ソフト比較と運用フロー]]を整えることは、日々のストレスを減らし、本業に集中するための投資です。無料体験期間を活用して、実際に銀行口座を連携させ、どちらの画面が自分にしっくりくるか試してみることを強くおすすめします。

**【関連記事】**

・ [[マイクロ法人の作り方完全解説]]
・ [[銀行口座開設ガイド]]
・ [[税理士の選び方ガイド]]

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