マイクロ法人をやめたくなったら?「休眠」と「解散」の手続き費用とメリット・デメリット|失敗しない出口戦略

「マイクロ法人を作ったけど、もう辞めたい」
「事業がうまくいかず、法人の維持費が負担になってきた」
マイクロ法人を運営している中で、こうした悩みに直面することは決して珍しくありません。しかし、法人を終わらせるには、設立以上に手間と費用がかかることをご存知ですか?

法人は「作るより畳む方が大変」と言われます。そして、その選択肢は「解散」だけではありません。「休眠」という手段や、稀に「M&A」という選択肢も存在します。

この記事では、マイクロ法人の「出口戦略」について、それぞれの選択肢のメリット・デメリット、手続きの流れ、必要な費用を詳しく解説します。失敗しないために、事前に知っておきたい知識をお伝えします。

1. マイクロ法人の終わり方:選択肢は「解散」「休眠」「売却」

マイクロ法人を終わらせる際には、主に3つの選択肢があります。

**1. 休眠(休業)**
法人としては残しつつ、事業活動を停止する方法です。法人格は消滅しませんが、「休眠届」を提出することで地方税の均等割(7万円)を免除できる場合があります。将来再開する可能性がある場合や、解散費用を抑えたい場合に適しています。

**2. 解散・清算**
法人を完全に消滅させる方法です。法務局への登記手続きや税務署への届出が必要で、登記費用だけでも約7~10万円程度がかかります。完全に事業を終了し、今後法人を使う予定がない場合に選ぶ方法です。

**3. M&A(会社売却)**
法人を第三者に譲渡する方法です。「マイクロ法人なんて売れるわけがない」と思うかもしれませんが、最近では少額のM&Aプラットフォームも登場しており、案件によっては可能性があります。解散費用を負担せず、場合によっては対価を得られる可能性があります。

どの選択肢を選ぶかは、「今後どうするか」「費用をどれだけかけられるか」によって決まります。

2. 最も手軽な「休眠届」の出し方と維持コスト

「とりあえず事業を止めたいが、解散までは考えていない」という場合には、「休眠」が最も手軽でコストを抑えられる選択肢です。

**休眠のメリット**
– 登記費用がかからない
– 再開が容易
– 手続きが簡単

**休眠のデメリット**
– 法人格は残るため、維持費用が発生する可能性
– 地方税の均等割(年間7万円)が免除されない場合も
– 決算報告は継続して必要

**休眠届の提出先**
休眠する場合は、以下の機関に届出を行います:

1. **税務署**:異動届出書、事業廃止届(任意)
2. **都道府県税事務所**:休楯届(地方税均等割免除のため)
3. **年金事務所**:資格喪失届(社会保険の資格を喪失)

特に重要なのは、「地方税の均等割免除」です。休眠届を出さないと、売上がゼロでも年間7万円の法人住民税がかかり続けます。

ただし、地方自治体によっては免除されない場合もあるため、事前に市区町村の税務課に確認しましょう。

3. 完全にたたむ「解散・清算結了」の流れと登記費用

今後法人を使う予定が全くない、または完全に整理したい場合は、「解散・清算」の手続きが必要です。

**解散・清算の流れ**

1. **解散の決議**:株主総会で解散を決議(議事録作成)
2. **解散登記**:法務局に解散登記を申請(登録免許税3万円)
3. **清算人選任登記**:清算人(通常は代表取締役)の選任登記(登録免許税9,000円)
4. **財産の清算**:資産を売却し、債務を支払い
5. **清算確定申告**:税務署に清算確定申告を提出
6. **清算結了登記**:最終的な清算結了登記(登録免許税2,000円)

**かかる費用(自分でやる場合)**
– 解散登記:約3万円
– 清算人選任登記:約9,000円
– 清算結了登記:約2,000円
– 合計:約**7万円**

司法書士に依頼する場合は、上記に加えて報酬が10~20万円程度かかるため、合計で**17~27万円**程度が目安となります。

また、清算中は「清算法人」となり、通常の法人税率より高い税率で課税される可能性があるため、残余財産が多い場合は注意が必要です。

4. 借入金や資産が残っている場合の注意点

解散・清算の際に特に注意が必要なのは、「負債」や「資産」が残っているケースです。

**借入金が残っている場合**

マイクロ法人でよくあるのは、「社長からの借入金」です。これは「役員借入金」として負債に計上されていますが、清算時にはこの債務を済さなければなりません。

もし法人にお金が残っていない場合、「債務免除益」として課税される可能性があります。ただし、個人からの借入金を減縮または免除する方法もありますので、税理士と相談することをおすすめします。

**資産が残っている場合**

清算後に残った資産(残余財産)は、株主に分配されます。マイクロ法人の場合、社長自身が100%株主のことが多いため、そのまま個人の収入となります。

この場合、「みなし配当」として課税されるため、残余財産が大きいと税負担が重くなります。事前に役員報酬や退職金として支払うなどの対策が必要です。

5. 小規模なマイクロ法人でも売れる?M&Aサイトの活用

「マイクロ法人なんて売れるわけがない」と思うかもしれませんが、実際には少額のM&A案件も増えています。

**売却可能なケース**
– 安定した売上・利益がある
– 特定の顔客や契約を保有している
– 許認可や資格を持っている
– ウェブサイトやSNSアカウントが育っている

**主なM&Aプラットフォーム**
– **ラッコマM&A**:中小・小規模案件に強い
– **バトンズ**:個人事業主のM&Aにも対応
– **トランビ**:事業承継・後継者探しに特化

例えば、「法人格が欲しい」「設立年数が欲しい」というニーズは意外と多く、数十万円程度で取引されるケースもあります。

解散費用が7万円以上かかることを考えると、M&Aで少額でも対価を得られれば、結果的にお得になります。まずは無料で登録して、反応を見てみるのも一つの手です。

6. まとめ:廃立前に知っておきたい、撤退ラインと処分手続き

マイクロ法人の出口戦略について、「休眠」「解散」「M&A」の3つの選択肢を解説しました。

**改めて整理すると:**

– **休眠**:再開の可能性があるなら最適。地方税免除を受けられればコストは最小。
– **解散・清算**:完全に終わらせるなら7~27万円が必要。負債や資産の整理が重要。
– **M&A**:価値がある案件なら検討の価値あり。解散費用を避けられる。

マイクロ法人は設立も簡単ですが、終わらせるのは意外と手間がかかります。しかし、適切なタイミングで出口戦略を実行することで、不必要な負担を避けることができます。

事業がうまくいかない、または他の道を選ぶことになった際には、早めに専門家(司法書士や税理士)に相談し、最も適した手段を選ぶことが大切です。

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