個人事業主としても自宅家賃を経費(家事按分)にすることは可能ですが、そこには「使用面積の割合」という厳しい壁があります。しかし、マイクロ法人を活用して「役員社宅」という制度を使えば、その壁を突破し、家賃の50%〜80%以上を経費にすることも合法的に可能です。
この記事では、マイクロ法人オーナーが絶対に知っておくべき「役員社宅制度」の仕組みから、具体的な計算方法、そして個人契約から法人契約への切り替え手順までを完全ガイドします。
1. 個人事業の「家事按分」と法人の「役員社宅」決定的な違い
個人事業主が自宅兼事務所の家賃を経費にする場合、「事業に使っている割合」で按分します。一般的には、仕事部屋の面積や使用時間に基づいて計算しますが、税務署に否認されない安全圧は20%〜30%程度です。
一方、法人が部屋を借りて、それを役員に貸し出す「社宅」の形式をとると、考え方がガラリと変わります。
1. 法人が大家と契約し、家賃全額(100%)を支払う
2. 法人が役員から、一定の「家賃相当額(自己負担額)」を受け取る
3. 「支払った家賃」と「受け取った家賃相当額」の差額が、全額法人の経費になる
この仕組みのすごいところは、役員が負担すべき「家賃相当額」が、実際の市場家賃よりも圧倒的に安く設定できる点です。
2. いくら経費にできる?「賃料相当額」の計算方法
多くのマンションが該当する「小規模住宅」(99平米以下)の場合、計算式で算出される金額は、実際の家賃の10%〜20%程度になることが多いです。
【シミュレーション例】
– 実際の家賃:120,000円
– 計算式で出した賃料相当額:約15,000円
– 会社の経費:105,000円(家賃の87.5%)
個人事業主なら3割、3.6万円しか経費にできなかった部屋が、法人化するだけで約9割(10.5万円)も経費になるのです。
3. 会社が負担できる上限は?税務調査で否認されないためのポイント
役員が会社に1円も払わずに無料で住んでいる場合、税務署は「会社が家賃分の現物給与を役員に払った」と判断します。こうなると、その分に所得税・住民税がかかり、さらに社会保険料も上がってしまいます。
必ず、計算式で算出した「賃料相当額」以上を会社に支払う必要があります。
4. 【実践編】個人契約から法人契約へ切り替える手順と手数料
現在住んでいる賃貸物件を社宅化したい場合の手順:
1. 管理会社・大家への相談
2. 再審査と契約締結
3. 手数料:家賃の0.5ヶ月〜1ヶ月分程度
これらのコストを払ってでも、毎月の節税効果(数万円)ですぐに元が取れるはずです。
5. 持ち家の場合は社宅にできる?
結論から言うと、マイクロ法人ではおすすめしません。法人から受け取った家賃は、個人の所得(不動産所得)として課税対象になります。結果、お金が右のポケットから左のポケットに移動しただけで、税金トータルで見るとメリットが出ないケースがほとんどです。
6. まとめ:住居費を圧縮して手残りを最大化するスキーム
マイクロ法人の「役員社宅制度」の要点:
1. 個人事業の家事按分(30%程度)に対し、51役員社宅なら50〜90%を経費化できる
2. 99平米以下の「小規模住宅」なら、役員負担額は家賃の10〜20%程度で済む
3. 役員負担額がゼロだと税務リスクあり
4. 現在住んでいる賃貸も、名義変更すれば社宅にできる
5. 持ち家の社宅化はメリットが薄いので非推奨
例えば、家賃10万円の物件にお住まいの方なら、この制度を使うだけで年間100万円近くの経費を新たに作ることができます。法人税の実効税率(約25%)で考えれば、年間25万円以上のキャッシュが手元に残る計算です。
